匠弘堂を知る

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[ コラム ]

設計士 宇塚担当

社寺建築観察日記
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2019.11.12

【第3回】日野誕生院

日野誕生院は、法界寺(国宝阿弥陀仏と阿弥陀堂で名高い!)の敷地の、道を挟んだすぐ裏手にあります。
本願寺の飛地境内となっていて、親鸞上人生誕の地を記念して建てられた建築とのこと。
この建築のみどころは、古代~中世の特徴を織り交ぜて計画されているところです。

回廊を取り入れた配置計画、胴張のある柱は飛鳥~奈良時代、
蟇股は平安時代、
各部材の面寸法は、平安~鎌倉時代の建築を思い起こさせます。
細部意匠にかなり凝っていて、施工する人にとっては、非常に手間のかかる大変な仕事だっただろうと思います。

所在地 :京都市伏見区
建築年代:昭和6年(1931)
設計  :笹川進太郎

本堂外観


本堂は、胴張のある柱2本セットで組物を支えるという、特異な構成。

 

本堂 軒裏


垂木・隅木は面取り。直線的な風鐸の形は、法隆寺東院夢殿のものに似ています。

回廊の屋根


回廊の屋根勾配はとても緩く、破風がスマートでとても上品。(雨仕舞は厳しいです💦)

軒先のディテール


回廊軒裏の目を引くディテール。垂木はもちろん、茅負下端も面取り。破風は、彫りが深いシャープなデザイン。

回廊 蟇股


蟇股は、肩が丸く、足が小さい平安時代風。虹梁は上下面取りで、平等院鳳凰堂の裳階の雰囲気に似ています。
平三斗と垂木割がそろっていないのも、きっと、時代を意識してあえてこうしているのだと思います。

回廊 化粧軒裏


化粧垂木の上に化粧棟木が乗る構成。類例は多くはないですが、時々見かけます。(石上神宮摂社出雲武雄神社拝殿、春日大社摂社若宮神社拝屋など)
棟木の存在感が薄くなり、軽快な印象を受けます。

 

回廊で囲われた境内は、古代寺院(法隆寺など)のイメージにつながります。
また、寄棟屋根も奈良の寺院を彷彿とさせます。
一方、細部意匠は、平安時代風でありながら、随所にモダンな感覚が見られます。
さまざまな時代の意匠が破綻なくまとめ上げられていて、設計者の創意工夫にあふれた魅力的な建築です。

京都市中心市街地からは、少し離れた場所にありますが、一見の価値ありです。法界寺だけでお帰りにならず、ぜひお立ち寄りください!

 

第1回記事はこちら
第2回記事はこちら

 

書き手:宇塚(匠弘堂・設計士)

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