[ コラム ]
設計士 宇塚担当
社寺建築観察日記【第1回】近代和風建築の代表格 仁和寺 宸殿・霊明殿
社寺建築の魅力とは何か。
形が決まりきっていると思われがちですが、よく見るとそれぞれに個性があるところ(※違いを説明するのが難しいよく似た建築も多数あります💦)。かたいイメージとは裏腹に、わりと自由に、時には大雑把につくられている部分があるところ。
「社寺建築観察日記」では、社寺建築の観察を通して、感じたこと・考えたことなどを書いていきます。
第1回は、真言宗御室派総本山仁和寺の宸殿・霊明殿を取り上げさせていただきます。
仁和寺宸殿・霊明殿の建築的なみどころは、「①様式感への強い意識」と、「②建築された時代のあたらしい感覚」が共存して、それぞれが高い完成度で大きな規模で実現されているところだと思います。
具体的には、
①柱・肘木・桁・垂木、隅木の面取、長い舟肘木、斗組のバランス
②宸殿の広々とした縁や霊明殿の長い向拝などダイナミックな構成、蟇股や欄間や錺金物の絵様(亀岡式と称される独特のデザイン)
とはいえ、こまかいところを見なくても、渡殿や庇や縁などのすがすがしさ、庭園越しに見る五重塔だけでも楽しめます。
建築されてから100年以上経過した現代において、お手頃な拝観料でいつでも見学でき、建物に上がり、細部を間近で見ることができます。いろいろな意味で、何度も行く価値のある場所です。
所在地 :京都市右京区
建築年代:大正3年(1914)(宸殿)、明治44年(1911)(霊明殿)
設計 :亀岡末吉
渡殿 柱・舟肘木・桁・虹梁
中世の住宅風建築(宇治上神社拝殿、高山寺石水院、慈照寺銀閣・東求堂など)は舟肘木が長いが、ここは特に長い。柱・舟肘木・桁に散(ちり)がないという驚異的な納まり。
霊明殿 向拝詳細
近世以降、向拝正面虹梁は彫刻を施すことが多いが、ここでは上下面取のみという中世風の形状。
霊明殿 向拝蟇股
霊明殿 錺金物
仁和寺といえば御室桜。
霊明殿 軒先
垂木・隅木の大きな面取り
宸殿 庇と縁と庭園
霊明殿 向拝軒裏
書き手:宇塚(匠弘堂・設計士)