強い信念と並外れた能力をもって宮大工の技術を独学で習得した宮大工棟梁の岡本弘と、その意思を受け継ぐ宮大工の技術集団…。
宮大工というものに限らず、伝統の技術と言われるものの多くは、いわゆる秘伝であり、師匠が手取り足取りその技術を教えるというスタイルではありません。弟子は師匠がする仕事を見て盗み、自分で習って身につけるものなのです。しかしながら岡本棟梁は違いました。聞けば、誰にでも平等に丁寧に教えてくれたのです。このおおらかな気持ちと仕事に対する厳しさと情熱に、人間として尊重し、心を揺さぶられた職人たちが集まり、強い結束力を生み出しました。そして仕事を任されるまでに成長したまな弟子たちとともに、新たに造り出したカタチが「匠弘堂」とも言えます。
社寺建築といえば、国宝や重要文化財に指定された有名な建築がすぐに連想されますが、指定をうけていない建築のほうが圧倒的に数多く存在しています。それらのなかにも、歴史的に貴重なものや、技術的・意匠的にも優れた建物がたくさん残っています。これらの建物の保存や建替といった事業において、少しでも専門知識をもった職人(とくに宮大工)がいるかいないかで大きく結果が異なってきます。そういった建物に対しても強く愛情を注ぎ込み、美しい建物を残し同時に宮大工という職人を育て上げ、社寺建築という伝統的木造建築技術を後世に伝えていくことで、日本の伝統文化の一端を担いたい。これが、「匠弘堂」として新たに出発した際の社会貢献目標であり、我々の存在意義なのです。
地域の人々が大切に守ってきた神様・仏様に対する信仰心と、日本古来より培われた自然への憧憬の念、それらと大陸から伝わった建築技術との融合で育まれた日本独自の木造建築技術。今後、再び社寺建築というものが時代の中心に回帰することは決してないにせよ、私たちが必ず守らなければならないものであると信じ、京都にある民間の小さな集団から、全国に向けて発信していきたいと考えております。 |